小惑星キロン(カイロン)の意味と解説【ネイタル/シナストリー】

占星術的意味と解説

占星術では、キロン(カイロン)とは『傷ついた場所』『癒しが必要な場所』を知る事ができる小惑星と言われています。

私たちの根源的な深い傷と、その痛みをどう癒していくのか?を探る際に活用できる場所と思ってください。

キロンのアスペクトがチャートに多い場合、養育者からの育児放棄、虐待をされて育つ可能性がある事を示唆しています。

実際、筆者のチャートにもキロンのアスペクトがものすごく多いです。

またキロン自体も逆行している時に出生しています。

虐待サバイバーでもあり、父親が蒸発した時点で育児放棄にも遭っています。
それ以前に生まれる前から母にとっては望まない子供でもあり、自分自身に傷があります。

自分のトラウマを癒すためにも、キロンの研究のためにも、この経験をキロンの解釈に活かせればと願っています。

キロンのルーラー(守護星)には議論があります。神話ケイロンから射手座とするもの、健康や知恵、奉仕から乙女座とするものが一般的でしょう。

中には人との交流から天秤座、毒矢に打たれた事から蠍座までを巻き込んで、乙女座〜射手座までを支配し、山羊座(土星)への架け橋とする、という解釈もあります。

そもそもキロンは『小惑星か彗星か』という、権威の議論がまだ終結していない存在です。現在短周期彗星になっていくであろうとも言われており、彗星にはそもそもルーラーを必要としない事から、『ルーラーの称号』自体、無意味な議論である可能性があります。

参考文献『Chiron – Healer and Wholemaker (English Edition)

筆者としては、乙女座〜射手座までの4つの癒しのプロセス(個人から社会に向けて)に関与するのが、キロン。そう解釈すると納得できるような気がします。

ただ個人的には乙女座っぽいと感じます。
自分の為に知性を使う双子座は水星っぽいですが、乙女座は知性の使い方が他者への奉仕の為。方向性ではキロンっぽいし、乙女座の目指す知性の使い方にも共通点を感じます。

しかし前述の通り、小惑星か彗星かの議論もあり、ルーラーに関しては無意味な議論かもしれません…。

カウンセラーや占星術師と一緒に、過去のトラウマに対処したりするための貴重な期間になると言われています。

キロンのサイン(星座)によって、向き合う内容が異なってきます。

出生図のキロンに逆行を持っている方(筆者もですが)は、常に心や体の傷に向き合う人生となります。

その原因はなんであったのか?因果関係はなにか?内面の世界との対話の人生となります。しかしその傷を受け入れた時に、自己のユニークな特性と得られた知恵を他者へ還元していこうとするでしょう。

公転周期は約50年。

12サイン(星座)すべてを旅するのに約50年を必要とする為、50歳の誕生日前後に『キロン(カイロン)リターン』を経験します。

土星と天王星の軌道を回り、海王星をも関わる事から、
『社会的な天体の橋渡し』として知られています。

Astrology and the Rising of Kundalini: The Transformative Power of Saturn, Chiron, and Uranus (English Edition)』で、著者バーバラ・ハンド・クロウは土星と天王星の間に架かる『虹の橋』としてカイロンを指しています。

自分自身を抑えること、抑圧(土星)から、どこでぶっ壊すか、反抗するか(天王星)の妥協点を見つける際に、キロンが架け橋となってくれるかもしれません。

キロンの星座とハウス

ここでわかるのは、そのサイン(星座)の性質の傷と癒しです。
サインが牡羊座なら自我に傷があり、牡牛座ならお金や所有する事に傷がある…など。

またここでは『世代間の傷と癒しのプロセス』がわかります。

例えば、現在キロンは2019年より『牡羊座』に移動しており、火のエネルギーが今後続いていきます。

どういう意味かというと、『行動的なプロセスで傷を癒していく時代(世代)』と解釈できます。

この期間は、積極的に傷を癒す行動に出る事、自我とは何か?の問いかけと癒しのプロセスが時代から必要とされるであろうと読み解けます。また氷河期世代の人々は現在キロンリターンがきています。

『傷に向き合い、積極的に傷を癒す行動に出る時代』に、このサイトが何かのヒントを提示できれば幸いです。

キロンのあるハウスは、『傷が起こった領域』を示しています。

何について傷ついていて、何を『癒す必要があるか』を教えてくれる場所です。

しかしキロンとは癒しの方法を人生の長い期間探っていくポイントでもあり、すぐに解決できるようなトピックでは通常ありません。それはどういう事かというと、癒す過程で『そのハウスから外に出る必要性』も提示しています。

いわばハウスとは『Cage(ケージ)』でもあり、捕らえられた鳥(傷や痛み)はケージから出て解放していく必要があるのです。

キロン(カイロン)12星座とハウス別の意味と傷【ホロスコープ】

キロンのアスペクト

通常アスペクトとは、その惑星の側面を強化します。
しかしキロンではそうではなく、機能するか曖昧と言われています。
ここでは、惑星とキロン(傷)の間で対立が起きる事もあります。

また問題を意識する、しないに関係なくキロン(傷)に関するテストやレッスンが人生で起きてくると言われています(それも予想もしていなかった場所から)

キロン(傷)とは『内なる戦い』であると、
自分の人生経験から筆者は解釈しています。

まずは問題に目覚める事、癒しが必要だと気づき癒していく過程で様々な知恵を獲得していく事、そのプロセスは『長い旅路である』と覚悟して、焦らない意識が大切であると思うのです。相談者様にも、そうアドバイスしています。

キロンのシナストリーチャート「恋愛の相性」

キロンが絡む恋愛をしたことがありますか?
筆者はキロンやリリス、ドラゴンヘッドが絡まないと恋愛になりません。

キロンが絡む人間関係とは「癒し」の関係です。
特に傷(キロン)が多い人にとって、
キロンが絡む恋愛には多くの学びがあります。

恋人にとっては金星、海王星は大きな意味を持ちます。
人生の苦痛、カルマ的な側面では土星です。

この関係には特別な癒しの学びがあると思っておくといいでしょう。
(特にタイトな場合は強力に作用しますよ)

自分のネイタルチャートで、相手のキロンが入るハウスには癒しと成長があります。

ハウスの分野はお互いに「苦労」や「傷」がありますが、
そこでお互いに模索する事により「学びと癒し=成長」が訪れるのです。

筆者は日本人とは?というのも研究テーマにしています。
西洋人の正義を集めた占星術では、キロンは癒しや成長です。
しかしそれはベースに理解という天王星の支配があるから起こる現象です。

日本人は物事は感情論で考えますよね。
「わかってくれて当然」「やってくれて当たり前」という、
甘えと依存心も、人間関係に強すぎると思います。

このことからキロンは、日本人には西洋人のようには上手に扱えないと思っています。

  • 傷に対してヒステリーが起きる
  • 相手を理解しようとしないで自然消滅する
  • 自己憐憫に終始する

こういった行動には特に注意しましょう。

海王星が支配する日本は、一体感は当たり前(他人の個性を認めない)、自分の考えていることはテレパシーで伝わる(空気を読め)と、ありえない感性を思っています。

こちらで意味を解説しています↓

【海王星の国・日本】芸術の惑星海王星とは?日本と西洋の違いを解説【占星術】

日本人は「なんでわからないの!?」と相手に要求しますが、
まずは”わかるように説明”しないと相手はわかりませんよね。
理論が圧倒的に欠如しています。

キロンに関しては「受容(自分で傷を認識する)」から始めましょうとアドバイスしています。
これは人に伝えるためには、自分の頭で整理することから始める必要があるためです。

シナストリーチャートも同様です。
お互いにどんな「傷と癒し」があるのか知ると、
関係の傷も解釈が変わるかもしれません。

小惑星キロンとは?

パロマー天文台で1977年10月18日に撮影された画像から、1977年11月1日にチャールズ・トーマス・コワルによって発見されたのが、小惑星キロンです。

マスコミによって10番目の惑星であると主張されましたが、その後は小惑星か彗星かで長らく議論を起こしました。現在ではおそらく短周期彗星になっていくであろうと言われています。

周期的な彗星活動のために氷が露出しており、青(または青灰)の色をしています。小惑星帯とカイパー帯の間を周回するケンタウルス族(小惑星)の一種で、土星と天王星の軌道を回っており、時に海王星をも巻き込んでいます。

ギリシャ神話のキロンとは?

小惑星キロンとは、ギリシャ神話のケイロンが名前の由来となっています。

“大地および農耕の神”であり、”ゼウスの父”でもあるクロノスと、ニンフ(妖精)のピリュラの間に生まれました。

大神クロノスは、海岸沿いで美しい妖精ピリュラを目にし、彼女の警戒を解くため(また妻であるレイアの目を欺くため)馬の姿となって近づき、無理矢理ピリュラと交わります。

しかし妻レイアに情事が見つかってしまい、馬の姿のままクロノスはその場を逃げ去ってしまいます。この時に身籠ってしまったのがケイロンで、ピリュラは(自分自身を恥じて)住んでいた土地を去り、放浪の末に辿り着いたペラスゴスの山中でケイロンを出産します。

しかし馬の姿であったクロノスによって授かったケイロンは、『半人半馬(上半身は人間で、下半身が馬)』の姿で生まれ落ちます。

その姿を見て悲嘆にくれたピリュラは、悲しみのあまりゼウスに願って菩提樹へと姿を変えてしまうのです。

いわば、ケイロンとは『望まれない妊娠』により生まれ、『望まれない姿』であった事から、母親ピリュラに捨てられてしまった存在なのです。

父には認知されず、母親にも捨てられた孤児ケイロンは、音楽や治療の神でもあり預言者でもあったアポロンと、狩猟と貞潔の月の女神アルテミスに養育される事になります。

文化的な二人の兄妹から、医学、予言、音楽、狩猟の知識を学んでいったケイロンは、ペーリオン山の洞穴に住み、その近くで薬草を栽培しては病人を助け、必要な知識を惜しみなく周囲に分け与えて過ごします。

このケイロンの姿勢は、自分を捨てた両親を恨む事ではなく、血のつながりがない養父母から受けた慈愛の心を、今度は自分も他者へ分け与えていこうとする姿です。

傷ついた心を癒すのは、憎しみの連鎖ではなく、傷から学び、自分を癒す事。その過程で得た知識で今度は人を癒していく、という一連のサイクルとも言えます。

ケイロンは、父クロノスから下半身が馬の姿だけではなく、不死の力も受け継いでおり、どれだけ傷を負っても蘇生し、年を取らない体を手に入れていました。

しかしケンタウロス族がヘラクレスと衝突し、争いに巻き込まれた際に、ヘラクレスの放った毒矢が誤ってケイロンの膝に突き刺さってしまいます。

不死身の身体故、痛みに耐えきれなかったケイロンは、ゼウスに頼み不死身の能力はプロメテウスに譲り、自身は死を選びます。

そしてその死を惜しんだゼウスにより、ケイロンは射手座へと姿を変えます。

医者でもあった彼が、自分の身体だけは癒す事も救う事もできなかった事から、『傷ついたヒーラー』と占星術の世界では呼ばれています。

★神話のまとめ

神話の世界でのケイロンとは、生まれながらに孤独で傷ついた存在でした。

しかし血の繋がらない人々の愛情や知恵、慈愛を受けた事で通常ならば体験できない大きな愛(父性や母性、無償の愛)を感じる経験、人生の教訓を得たとも言えるでしょう。

ケイロンの物語は、私たちの『悲しい運命を受け入れる』ことによってのみ、誰かのヒーラーになれる、という事を教えているのです。

ケイロンが不死をプロメテウスに譲ったことにより、間接的にプロメテウスの苦しみを救っているのにお気づきでしょうか。

プロメテウスは、寒さや飢えに苦しむ人間を不憫に思い火を人間に与えました。
しかし残念ながら人間は愚かで、『火』を使って武器を作り、戦争を始めてしまったのです。


引用元URL:「ゼウスに内緒で人間に火を与えるプロメテウス

これを知ったゼウスは怒り、プロメテウスはカウカーソス山に3万年生きながらに縛り付けられる身になりました。体を巨大な鳥(アイトーン)に食いちぎられながら…です。
彼がその苦しみから解放されるには、”誰かが自分のため”に不死を捨てないといけませんでした。

カイロンは間接的に、プロメテウスを永遠の苦しみから解放しているのです。

それだけではありません。
毒矢を放ったヘラクレスは、実はケイロンの弟子なのです。

ケイロンが生きていたら、師匠であるケイロンを苦しめた、という罪の意識にヘラクレスは永遠に苦しむ事になったでしょう。

自分の悲しい運命を受け入れることは、強さなのです。
生きる事は学びや経験をするためであり、誰かに勝つことや負けることではありません。

そして自分の運命とは、誰かの運命とも繋がっています。

父親や母親の行動は子供の人生にも影響しますし、一人の人間の行動が社会に大きな影響を与えることも、また社会全体が1人の人間の行動に影響を与えることもあります。

そう考えると、社会問題にもまた別の視点が生まれてきませんか?

誰かを救う側に回るにはまず、自分を癒すこと。
運命を受け入れる(受容)必要がある事を、神話は我々に教えています。

これは筆者の話で恐縮ですが、筆者も家族からは愛情を全く得られなかったものの、通常なら感じる事ができなかった感性を人生で得たと思っています。

  • 自分の不幸を嘆くことに、何も意味がなかったこと。
  • 不幸からたくさんの気づきを得て、進化ができたこと。
  • 苦しみとは様々な事を教えてくれる先生であったこと。
  • 手放すことによって、苦しみを終わらせることができること。

それだけではなく、様々な人の運命や感性が間接的に自分を救っている事への気づきは大きかったでしょう。

例えば音楽を通して作り手の感性や人生観が癒しの作用をもたらす事、
他者からのささやかな親切を敏感に感じ取れる能力、
「血のつながりだけが全てじゃない」という、独特の感性など。

血の繋がりの中で育つと、自然と血の繋がった家族が欲しいと思うのが人間です。
しかし、虐待サバイバー達は『血のつながりを拒否』する面が多々あると思います。

そして親に捨てられた経験から、もう2度とこんな思いはしたくない(捨てられたくない)と強く恐れてしまう面、『拒絶』に関して敏感になる性質など…。

『だったら最初から大切な存在など欲しくない(人との接触を遠ざける姿勢)』という、傷がない人々には理解しがたい、孤独な人生を(傷を抱えたまま)生きてしまう傾向があります。

そうした人々の癒しや傷、痛みに寄り添えるような存在がキロンなのではないかと、筆者は考えています。キロンへの向き合い方の参考になれば幸いです。

また筆者はあらゆる側面から「日本人の愛に関して」も考察しています。

【愛は幻?】愛を説くキリスト教、愛は自己愛と説く仏教【ブッダは天王星マインド】

これは愛情に満たされなかった人間だからこそ、
愛を求めては裏切られたからこそ、見えてきた別の側面です。

キロンを音楽から理解しよう!&参考文献

Slipknot 『Unsainted』

スリップノットのVo.コリィ・テイラーの生い立ちは壮絶で有名です。何年にもわたって母親と国中を移動した母子家庭のホームレスで、幼い頃に満足な食事を得られなかった事で身長が平均より低い事はよく知られています。自傷行為、薬物依存、自殺未遂など、人生は困難を極めました。彼は幼い時に性的虐待の犠牲(外部ページ)にもなっており、長い間その傷を隠し、活動をしてきた事を近年告白しています。

過激なメタルバンドのフロントマンとして活動してきたコリィですが、彼がたった一言『私が今まで望んできたのは父親になることだけでした』と話したのはとても悲しい話です。彼は『子供たちに私が経験したことを決して経験させたくないので、大学の資金、請求書の支払い、衣服や食料の購入、強固で安全な基盤、何も心配する必要がない事を示したい。彼らに自分は保護されている、と感じて欲しい』と語っています。
山羊座リリスを持つ人らしい、真面目で秩序を重んじる面が垣間見えます。

キロンが持つ虐待と育児放棄の環境に生まれやすい事、(心と身体両面に)傷を持ち、その傷ついた体験を癒す人生、そこから得た知恵で人々を救う、キロンの体現者と言える人でしょう。彼の絶叫は心の痛みを歌い、美しい歌声に変わる瞬間はまさに癒しを表現しているのかもしれません。
彼は土星×冥王星90度という、最も冷酷で悲しい星と、ヒーラーとして生きる強い使命を持つ、太陽×キロン120度を持っています。

Eminem 『Lose Yourself』

キロンの中でも特に第4ハウスは育児放棄と関連があります。ここにキロンを持つラッパーに、エミネムがいます。攻撃的で、ずっと怒り狂うようなラップスタイルですが、その原因を作ったものが生い立ちです。

物心がつく前に父親に捨てられ、母親からは冷たい扱いを受け、幼少期は住む場所を転々とし、安定しない生活。黒人街のデトロイト地区での極貧生活の中でラップに出会うものの、そこは黒人優位社会。白人であるエミネムは当然仲間外れやいじめを経験。親の愛情を得られない事、人間関係でも疎外され、最初の自主制作CDの売り上げは何と70枚。自殺未遂、薬物中毒も経験しました。

その頃のエピソードで有名なものに娘ヘイリーとの愛があります。その頃のエミネムは犯罪多発地域に住み、強盗は日常茶飯事。週60時間も労働したのに、娘の誕生日の5日前に解雇されます。それでも彼は娘にプレゼントを買おうと40ドルを握りしめていたというものです。こういった残酷な格差社会は日本人には理解が難しいでしょう。日本は恵まれすぎており、邦楽の歌詞にもその辺りの幼さが表れているなと思います。

仕事を解雇され、家も追われ、辿り着いたロサンゼルスのラップバトルで2位になり、翌日ラジオショーでフリースタイルを披露。なんとそこでドクター・ドレーに見出され、ド底辺から成り上がっていったエミネム。彼の人生は家族との傷(キロン)に起因した「貧困、怒り、ドラッグ、うつ病、名声」との戦いの物語でもありました。そんな彼を傷つけてきた原因も家族なら、癒してきたのも家族(娘)だったと言えるでしょう。娘を溺愛し、母親との和解を模索し、義理の姉であるドーンの娘、元妻キムの血のつながらない子供の親権も持っています。

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参考文献(洋書)

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